鳥取労働局で行われた労働基準監督署職員研修に講師として招かれ、
民事上の責任能力について講演させていただきました。
労災保険給付の原因となった業務災害や通勤災害が、
第三者によってもたらされた場合、
すなわち、
政府や事業主、受給権者である労働者・遺族以外の者の不法行為によって生じた場合、
政府は、給付した労災保険の価額の限度で、
本来被災者が有していた第三者への損害賠償請求権を取得します(労災保険法12条の4第1項)。
この場合、第三者が責任能力を欠く未成年者であったり、
責任能力を欠く精神障害者であった場合には、
政府は、責任無能力者を監督する監督義務者や、
監督義務者に代わって監督する代理監督者に対して求償権を行使することになります。
このため、第三者に責任能力があるかどうかの判断が求められます。
責任能力とは、行為の責任を弁識する能力と定義されており、
概ね12歳程度から責任能力があると判断されています。
すなわち健常な12歳程度の知能があれば、通常、責任能力はあると判断されます。
もっとも、実際の裁判では、年齢だけで一律に判断するわけではなく、
個々のケースごとに、被害者保護の観点も含めて、
責任能力の有無を判断しているようです。
ともあれ、
第三者行為災害においては労災保険給付の範囲で求償が行われますので、
事故が第三者によってもたらされたものである場合には、
受給権者は、その事実(加えて、第三者の氏名・住所、被害の状況)を、
遅滞なく、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労災保険法施行規則22条)。