先日、宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」を観てきました。
78歳になる父が観たいと言いだしたので、ちょっと、びっくりです。
ジブリの作品は、大方、観てきたつもりですが、
今回の作品は、えらく、大人向けの映画でした。
ところどころ、ジブリらしい活劇的な表現方法もみられますが、
終始、大人のための文芸映画でした。
宮崎監督も、ようやく、世間の評価や興行に振り回されずに、
ご自身が作りたい映画を作れるようになったのかもしれないですね。
ちょっと思い切ったことをされたと思います。
もともと、私は、宮崎作品の中では、
ヒロインを描く作品よりも、ヒーローを描く作品の方が好きでした。
気持ちの良いダンディズムを描くからです。
今回の作品もその一つ。
主人公の堀越二郎氏のダンディズムが冴えています。
ちょっと、孤独で、はかないところがあって。
このあたりのメンタリティには
共感するお父さん方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、
この作品の一つの柱となるテーマに、夫婦愛があります。
夜中に、結核をわずらう妻の寝床の横で、
堀越二郎氏が飛行機の設計をするシーンがあるのですが、
寝ている妻の横で、夫はタバコを吹かしながら仕事をするわけです。
妻に「タバコすって良い?」と聞く夫と、
夫に「手を握っていてほしい」とねだる妻。
で、それを夫婦はお互いに許し合うわけですよ。
なかなか、味のあるシーンでした。
結核患者の横でタバコをふかすなんて、とんでもない!
と言って、苦情を述べた方もいたと聞きますが、
作品のいちばん良いところを、もったいない見方をしたものだと思いました。
このシーンを身体的虐待(DV)にしてしまうのは、あまりにもったいない。
時代も変われば、人もそれぞれというべきでしょうか。
ま、いろいろな見方があって良いわけですが、
このシーンを消し去ることがないようにしてほしいものです。
ところで、
映画を見終わったあと、
父は、とても満足そうでしたが、
母は、えらい退屈な映画やった、
と不満を漏らしていました。
夫婦というのは、なかなか、奥が深いものです。