弁護士 駒井重忠Blog

弁護士法人 菜の花

「非行少年」に、もっと弁護士を!

寒い日が続きます。

鳥取の天気予報は、毎日が、雪マークですね。

私が鳥取に来てから、こんなに雪が降る年は初めてです。

今夜は、氷点下だとか。

道路に積もった雪が凍り付いています。

 

昨日、

私は、東京で、日弁連が主催するシンポジウムに参加してきました。

「非行少年」に、もっと弁護士を!
~全面的国選付添人制度の実現をめざして~

というテーマです。

 

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皆さんは、

少年付添人をご存じでしょうか?

 

少年の非行には、

刑事裁判は原則として行われません。

少年法に基づく少年保護事件として扱われ、

家庭裁判所の少年審判が開かれます。

少年保護事件では、

弁護士は、少年の付添人として、手続に関与します。

 

付添人は、非行事実の認定や、処分の必要性について、処分が適正に行われるように、

少年の立場から、手続に関与します。

家庭や学校、職場などの環境を調整したり、少年の更生を支援したりします。

 

こうした付添人制度について、

2007年11月から、

国の費用で少年に弁護士付添人が付くという、国選付添人制度が始まりました。

 

しかしながら、現在の国選付添人制度は、殺人や強盗など一定の重大事件に限られています。

このため、成人の刑事事件では、98%以上、弁護士の弁護人が付くのに、

少年事件では、少年鑑別所に収容された少年の約40%しか、弁護士の付添人が付いていません。

2009年度の国選付添人選任数は、516人。

少年鑑別所に収容された少年のわずか4.6%にすぎません。

 

2009年5月に、起訴前の被疑者についても、国費で弁護人が付く事件が増えました。

ですが、少年については、国費で付添人が付く事件が特に重大な事件に限定されている上、

国選付添人を選任するかどうかは裁判所の裁量に委ねられているので、

家庭裁判所に送致される前に、国費で弁護人となっていた弁護士が、

家庭裁判所に送致された後は、引き続き、国費で付添人となることができません。

 

引き続き、付添人として活動するためには、

本来は、私選で、選任されなければならないのです。

しかし、少年には、弁護士に依頼するだけの資力がないのが通常です。

このような、制度のすき間が生じています。

 

そこで、日弁連では、全国の会員から特別会費(月額3100円)を徴収し、

これを財源として、付添人の費用を援助しています。

これによって、少年は自ら費用を負担することなく、付添人の援助を受けることができます。

2009年度の付添援助制度の利用件数は、6912件。

総額にして、約7億円が、弁護士の特別会費から支出されました。

本来ならば、国の予算によって賄われるべきことを、弁護士が自分たちの費用で肩代わりしているのです。

 

今回のシンポジウムは、現在の国選付添人制度を拡充し、

少年鑑別所で身体を拘束されたすべての少年に国費で付添人が付く制度が実現されるように、

少年法の改正を求めるものです。

 

私も、全面的国選付添人制度実現本部の一員として、

今回のシンポジウムを見に行きました。

 

シンポジウムでは、

子どもたちと弁護士が演じるお芝居もあり、

付添人の役割がわかりやすく伝えられていたと思います。

 

お芝居の後の、リレートークで、

かつて少年院に入所した方のお話しが印象に残りました。

彼女は、二度、少年審判を受けたそうですが、

どちらも弁護士の付添人が付いていません。

一度目は、

悪いことの言い訳をしたくないと思ったから。

二度目は、

自分の人生なんて、どうなっても良いと思ったからだそうです。

 

少年鑑別所に入所した少年にとっては、

弁護士の付添人を付けるという情報が、情報として意味をなさないことがあるのです。

 

少年たちの多くが、家庭で虐待を受けたり、学校で疎外されるなどの問題を抱えています。

自分たちの居場所がなく、信頼できる大人に出会えずに、孤独を抱えています。

貧困の問題もあります。

しかし、子どもたちは、この国の未来を支える大きな存在です。

孤立した少年を受容し、理解し、少年に法的・社会的な援助をして、成長を支援することは、

少年の更生にとってきわめて重要なことです。

弁護士付添人が付くことは、少年の更生にとってきわめて重要なことではないでしょうか。

 

全面的国選付添人制度が、早期に実現されることを、望みます。