憲法改正手続法(正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」です。)は、憲法改正の国民投票の手続を定めた法律です。
日本国憲法は、国家権力の行使に制約をかけることによって、国民の基本的人権を保障する、国の根本規範です。
したがって、憲法の改正は、主権者である国民にとって、きわめて重要な意思決定です。
憲法の改正は、長い将来にわたっての、国のあり方を決めるものとなるので、国民の意思が正確に反映されなければなりません。
そして、客観的かつ十分な情報が国民に与えられる必要があります。
また、国民が慎重に検討し、よく考えた上で判断するために、十分な期間が与えられなければなりません。
こうした観点でみた場合、現在の憲法改正手続法には、特に三つの問題が指摘されています。
一つは、最低投票率の定めがないことです。
極めて低い投票率であっても、その有効投票の過半数で可否が決せられてしまいます。
これでは、国民の意思が正確に反映された改正といえるのかどうか、疑問が残ります。
二つ目は、有料広告の規制が十分でないことです。
テレビやラジオ、新聞を利用する有料意見広告は、極めて大きな影響力があります。
一方、これらの広告には多額の費用がかかります。
このため、資金力の差によって情報提供に不公平が生じるおそれがあります。
これでは、客観的かつ十分な情報が国民に与えられないままに改正の可否が判断されるおそれが生じます。
三つ目は、発議から国民投票までの期間が短いことです。
現行の憲法改正手続法では、最短60日と定められています。
これでは、十分な情報交換と、十分な意見交換ができないおそれがあります。
このように、憲法改正手続法には、見直すべき重要な問題が指摘されています。