弁護士 喜田恭昌BLOG

弁護士法人 菜の花

「負」動産について

 弁護士の喜田です。本日は、相続の時に多くの方が頭を悩ませる不動産について書いてみたいと思います。

 都市部の一等地、もしくは将来にわたって収益が安定的に見込める土地や建物を除いて、誰も望んで相続したくないのが通常です。土地や建物のことを法律上、不動産といいますが、このうち、人が避けたがるもののことを「負」動産などと呼ぶことがあります。

 法律上、相続を望まない法定相続人がとるべき手段として真っ先に思い浮かぶのは相続放棄です。しかし、相続放棄は相続したうちの一部に限定して行うことはできません。したがって相続放棄をするのであれば、放棄しようとする人が相続した全てについて行う必要があります。それでは、他に預金や有価証券など、財産的価値の高いものが遺産に含まれている場合に困ります。

 では、他にいかなる方法を検討すべきでしょうか。
 これは複数考え得るところです。一つ目に、被相続人が引き継がせたい財産について、同人の生前に贈与(民法549条)しておき、それ以外について、被相続人の死亡後に相続放棄(同法919条、938条以下)という形をとることが考えられます。
 二つ目に、不動産の内の土地に限定した話にはなりますが、相続土地国庫帰属制度(相続土地国庫帰属法という法律に基づくもの)をとることが考えられます。

 もっとも、生前贈与の場合、相続の場合の相続税とは異なる贈与税の考慮が必要となります。また、相続放棄には、放棄できる期間に法律上の制限があります(民法915条1項)し、放棄の申述という裁判所への手続が必要となります(同法938条)。
 相続土地国庫帰属制度の利用には、①国に対して国庫帰属の承認申請を行い(相続土地国庫帰属法2条)、承認を得る必要がありますし、②承認を得た場合には、負担金を一定期間内に納付する必要があります(同法10条1項、3項)。

 これらいわゆる「負」動産の問題につきましてお悩みの方がおられましたら、一度、弁護士までご相談いただければと思います。