弁護士の喜田です。今日は標記のテーマについて少し書いてみたいと思います。
これらはいずれも、夫婦の一方が死亡した場合に残された配偶者がその後も無償で居住する権利のことをいいます。
もっとも、両者は目指すところが異なるのでその要件や効果について差異があります。
前者は配偶者の終身の権利保護を目的とするものである(民法1030条本文)のに対して、後者は被相続人の遺産についての権利関係が終局的に確定するまでのいわば一時的な権利です(1037条1項参照)。
要件について最も差異のある点は、次の通りです。被相続人が生前において配偶者以外の第三者と共有していた場合には、配偶者居住権は認められません(民法1028条1項但書)。例えば、被相続人である夫の死亡時において、夫と長男がそれぞれ持分2分の1で共有していた自宅建物について、妻は配偶者居住権を主張することは出来ません。
他方で、短期居住権の場合はそのような制限がありません(同法1037条以下参照)。仮に夫の死亡後、遺産分割協議が未成立の状況で妻が長男から一方的に追い出されそうになった場合、対抗手段として配偶者居住権を主張することはできません。他方で、配偶者短期居住権を主張して、遺産分割協議を求めることはできます。言い換えると、協議がまとまらない限り、配偶者短期居住権を盾に住み続けられる可能性はあるように思います。