弁護士 喜田恭昌BLOG

弁護士法人 菜の花

相続時精算課税について

弁護士の喜田です。
 生前贈与や相続に関する相談の一環として、相続時精算課税について最近ご質問を受ける機会がありましたので、ここで少し述べます。
 人が生前に財産を他者に譲り渡すことを生前贈与といい、亡くなった人の財産を相続人が引き継ぐこと相続といいます。
 課税の観点からみると、原則として、前者のケースでは贈与税が賦課され、後者のケースでは相続税が賦課されます。
 ここで原則と書いたことからも想像がつくとおり、前者のケースの例外として、相続時精算課税制度があります。
 小難しいことは抜きにして、かかる制度の大まかな中身を述べますと、贈与税について総額2500万円の特別控除を受けることができます。すなわち、総額2500万円以下については、贈与税が非課税となり、相続時に相続税の賦課対象となります。
 加えて、令和5年の税法改正により、令和6年1月1日以降の贈与については受贈者(贈与を受ける人)ごとに、年間110万円の基礎控除を受けることができるようになりました。すなわち、年間110万円以下の部分については、贈与税のみならず相続税も非課税となります。
 以上に述べた特別控除および基礎控除の上限額までは贈与税の賦課を受けずに贈与することができ、相続時に相続税の賦課対象となります。
 次に、利用の手続きについて述べます。贈与を受けた年の翌年の翌年の2月1日から3月15日までの間に納税地の所轄税務署長に対して、相続時精算課税選択届出書を提出しなければなりません。
 制度の大まかな中身は以上となりますが、制度利用を検討中の方にとって最大の関心事は、ご自身の財産について当該制度を用いると否とでいずれが節税を図れるか、ということでしょう。
 これについては、結論から申し上げると、ケースバイケースということになります。とりわけ当該制度を用いることのメリットが実感できるケースの具体例として、以下で2つ述べます。
 1つ目に、収益性のある不動産があげられます。
 理由は次の通りです。2500万円までなら贈与税が賦課されず、なおかつ、相続税賦課の基準時である相続開始時まで受贈者に賃料収入が入り続けることになれば、節税をはかることができるだけでなく、受贈者は将来の相続税賦課を見越して、賃料収入を積み立てることが可能となり、相続時になって慌てる心配も減るといえるからです。
 2つ目に、将来値上がり見込みのある資産(値上がり確実な土地や株式など)を贈与するケースです。なぜなら、相続時精算課税による相続税の算定の基準時は贈与時だからです。値上がり前と値上がり後では、値上がり前の価格を基準にしたほうが節税をはかることができます。
 相続時精算課税についてご利用を検討されている場合、一度、最寄りの弁護士又は税理士にご相談ください。
 なお、弊所では、日頃より協力関係にある税理士の先生へのご紹介や連携を取らせていただくことも可能です。お気軽にお尋ねください。