「何が好きですか?」と聞かれると返答に困るが、ネクタイであれば、人より多少多く持っているように思う。妻から、「また買うの?家にたくさんあるでしょ?」と怪訝な顔をされるが、いやいや、分かってない。スーツを着ているとき、個性が出せるのはネクタイと腕時計くらいだが、ネクタイが人に与える印象は、腕時計と同じくらいに大きなものがあると個人的には思っている。
ネクタイ売り場に行くと、沢山の種類・柄の商品が並べられている。選択肢の数は、他のアイテムに比べて段違いに多い。その中から、どのネクタイを選択するか。昔は、何を選べば良いのか分からなかったが、年を取り、自分のスタイルや好みが分かってくるに連れ、「ぱっ」と目に付くものが現れるようになる。とは言え、買ったときは良いと思って手に取ったネクタイが、しばらくするとイマイチに感じることがあり、逆に、自分では選ばなかったが、店員さんに勧められて購入したネクタイが、身につける度にその良さに気付き、満足することがある。また、合わせるシャツの色・柄によってもネクタイの表情は変わる。実に奥深い世界だ。
職業柄、比較的自由にネクタイを選択することが出来る(と思っている。)。誰に文句を言われるわけでもないので、派手に遊んでも良し、シックに決めても良し。
腕時計であれば、愛好家は、「○○の時計ですね。(以下、うんちくで盛り上がる)」となるが、ネクタイの場合、「素敵なネクタイですね。どこのブランドですか。」と話題になることは少ない。そういう自己満足的な所も、これまた良い。
先日初めて、ネクタイをオーダーで作ってもらった。スーツやシャツをオーダーした経験がある人でも、ネクタイまでは多くないはず。イタリアで縫製してもらうため、担当者からは「日本とは違いますので、出来上がりは気長に待って下さい。」とのこと。実際、忘れた頃に送られてきた。
一人ひっそり、「なんて素敵なネクタイなんだ」と楽しんでいる。