2016年(平成28年)8月、第3次安倍第2次改造内閣が発足し、「一億総活躍」社会を実現するための最大のチャレンジとして「働き方改革」が政権の主要テーマとして打ち出されました。
翌月には有識者から成る「働き方改革実現会議」が発足し、約2年の準備期間を経て、働き方改革法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が2018年(平成30年)6月29日に成立、同年7月6日に公布されました。
主要な法改正の施行期日(中小企業)は、次のとおりです。
2019年4月1日 年5日間の有給休暇の取得、使用者による労働時間の適切な把握
2020年4月1日 時間外労働の上限規制、派遣労働者の同一労働同一賃金
2021年4月1日 パートタイム労働者・有期雇用労働者の同一労働同一賃金
2023年4月1日 割増賃金率の見直し
では、何故今働き方改革なのか。
日本経済の成長の妨げとなる問題の1つに少子高齢化(生産年齢人口の減少)の問題があります。
また、日本は先進諸外国に比べて労働生産性が低いと言われています(長時間労働)。
働く人口が減っている上に労働生産性が低いとなれば、高い経済成長は望めません。
少子化対策を進めることは勿論ですが、それだけでは不十分です。
日本経済の再生・成長を実現するためには、「労働生産性の向上」と「労働参加率の向上」を図る必要があるのです。
先に挙げた年5日間の有給休暇の取得は、「労働生産性の向上」と深く結びついています。
また、同一労働同一賃金は、「労働参加率の向上」に関係します。
詳しいお話はシリーズ2回目以降の本ブログでお話ししようと思いますが、このような背景事情、立法事実をきちんと理解しておかないと働き方改革は実現しません。
単に「有給休暇を取れ。」「残業するな。」では企業の繁栄は望めません。
休暇を取ることを労働生産性の向上に結びつけないと、真の改革とは言えないのです(単に法律で求められている有給を消化して終わり。)。
ここで重要になるのは、休暇に対する使用者・労働者双方の意識改革ということになります。
また、有給休暇を取得しやすい(取得出来る)職場環境の整備も重要になります。
例えば有給休暇の取得について考えるとき、上記の視点が欠落すると時代の流れ、改革の流れに完全に取り残されてしまいます。
取り残された企業はどうなるでしょう。魅力的な他社に優秀な人材が集まり、より高みを目指す優秀な従業員が転職していきます。
取り残された労働者はどうなるでしょう。終身雇用・年功賃金といった従来の日本型雇用システムは終焉を迎えつつありますから、これまでのような職業の安定は望めません。
また、成果主義人事がこれまで以上に拡大していきますから、生活の安定は自分自身で勝ち取っていかなくてはなりません。
では、どうすれば良いのか。
ここが労働法の難しいところです。
働く職場、働く人は千差万別。一般論を述べることが難しく、またナンセンスなのです。
個別具体的に考えること、それしかないのです。
抽象的な話が続いてすいません。もう少し。
長時間労働に関連し、過労死の問題も昨今社会問題化しています。
電通事件が非常に有名ですが、このような痛ましい事件を繰り返す訳にはいきません。
使用者による労働時間の適正把握と時間外労働の上限規制、割増賃金率の見直しは、長時間労働の是正(過労死対策)に関する法規制です。
あちらこちらから、「そんなことを言われても、仕事が回らなくなる。」といった声が聞こえてきそうですが、この問題に真正面から向き合うことを企業は求められています。
この問題に真剣に取り組むことは、尊い命を守るだけでなく働きやすい職場環境の整備に繋がります。
また、労働生産性の向上と労働参加率の向上にも寄与することになります(そのように有機的に結びつけなければなりません。)。
冒頭で紹介した働き方改革実現会議が決定した「働き方改革実行計画」を見てみましょう。次のようにあります。
「「働き方」は「暮らし方」そのものであり、働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革である。」
どうでしょう。
「24時間働けますか」「モーレツ社員」はもはや過去のお話。
終身雇用、年功賃金、画一的な労働制度、長時間労働、正規労働者と非正規労働者の待遇差といった従来の日本型雇用システムが変容を迎えつつあります。
そのような位置づけで働き方改革を理解して下さい。
さて、このような前置きをした上で、次回以降、法改正の具体的な内容とその対応について少しお話しすることにしましょう。
次回は本年4月から本格スタートした年次有給休暇の取得について。
GW中に更新する予定です。