先日,日弁連主催シンポジウム「死刑について考える~小説家と学者の対話~」をオンラインで視聴しました。
小説家というのは芥川賞作家の平野啓一郎氏で,学者というのは井田良中央大学大学院教授です。
死刑制度の存廃については,国内では様々な意見があります。
私自身,死刑存廃について立場を明言できるほど考察しておりません。また,この問題については,簡単に立場を決定づけることは困難であると考えています。
存置派からは抑止効果論については言及されますが,抑止効果については,効果測定が困難で議論の参考にならないこと(棚上げしないと議論が進まないこと)などは興味深いお話でした。また,死刑があることは,凶悪犯罪を起こす動機(「死刑になりたいからやった」などという動機)になることもありうるという視点は,それもそうかと思わされました。
平野氏は,以前は死刑存置の立場(厳密には仕方ないという立場)であったところ,死刑廃止論者になったとのことでした。
その考えが変化していく過程を論理的にうかがい,なるほどと思わされることが多くありました。
上記のとおり,私自身は死刑制度について存廃いずれか明言できるほど考えを深めておりません。
ただ,法律家としてはもちろんですが,一市民として死刑制度のある日本において同制度についてしっかりと考えるべきであると痛感する機会となりました。
なお,平野啓一氏は「死刑について」(岩波書店),井田教授は「死刑制度と刑罰理論 死刑はなぜ問題なのか」(岩波書店)という著書において死刑制度につきそれぞれのお考えを述べられております。シンポジウムに参加して実際の登壇者の方の意見をうかがい,その著書に触れるとより理解を深めることになるように思います。